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IT全史 情報技術の250年を読む

どうしてこの本を選んだか

「痛快コンピュータ学」でコンピュータの歴史に興味を持ったからだ。 もっと別の視点でコンピュータの歴史を紐解き、知識を得たいと感じたため。

概要

腕木通信、電信、電話、ラジオ、テレビ、そしてインターネット、AI ―― 情報技術の歴史を、近代から未来像まで一気読み!

人工知能(AI)が人の仕事を奪う――このように言われるほど近年の情報技術の進展は目覚ましい。 インターネットが広まって以降、私たちの生活やビジネスは劇的に変わった。 これらの動きをいたずらに追うだけでは、その本質は見えてこない。これから先の世の中がどのように変わるかを考えるためには、情報技術にまつわる歴史を振り返り、現在の立ち位置を知ることが大切である。

産業革命のあと、フランスで腕木通信と呼ばれる技術が誕生したのが1794年。そして、レイ・カーツワイルが主張する「シンギュラリティ」、すなわちコンピュータの能力が人間を超え、これまでとまったく異なる世界が現れるのが2045年とされている。本書は、この間250年の物語だ。

情報化時代の必須知識や本質をつかむ力をつけるために、必読の一冊! テクノロジー用語に馴染みのない読者もすらすら読める。

感想

ITという言葉の定義は非常に広いと思う。ITの意味は「インフォメーションテクノロジー」、つまり情報技術だ。では、この「情報」とは一体何なのか。それを明確に定義したのがシャノンであると言える。

では、それ以前には情報がなかったのかというと、そんなことはない。人間の大きな発展に寄与したのは、間違いなく文字の発明だ。文字は情報技術の一つと考えられるが、文字そのものを「IT」と呼ぶことに賛同する人は少ないだろう。

この本では、情報を送り届ける技術を腕木通信をはじめとして定義し、そこからIT技術の発展について記している。腕木通信の本質は、情報を送り届けるという点にあり、それ以前にも騎馬や日本でいう足軽のように、物理的に情報を運ぶ技術は存在していた。しかし、ITの始まりはこの腕木通信であり、そこから本書をスタートさせている。

この本では一貫して「情報を送り届ける」という点に注目しながらIT史が語られていく。ITというとコンピュータを連想しがちだが、本書は通信に焦点を当て、それを追いかけている点が新鮮だと感じた。

今後への活かし

自分の中でITというと、大学で学んだものを指すと思っていたが、「情報を送り届ける技術」という意味でのITという新しい知識を得ることができた。コンピュータだけでなく、ネットワーク通信にも少し興味を持ったので、これを機にネットワーク系の歴史についても調べてみたいと感じた。

Notes

  • フランスで発達した腕木通信は、ネットワークの規模、送信可能な語彙数、送信スピードにおいて高い完成度を誇っていた。これほどの通信手段が電信以前に存在していたことは、まさに近代的な情報技術の始まりにふさわしい貫禄と言えるのではないか。

  • たとえ送れる情報量が少なくても、騎馬郵便よりも速い通信手法が求められていた。

  • 腕木通信が電信という新しい装置に置き換えられるということは、装置群に秩序がもたらされ、人間の相互作用が大きく変化することを意味していた。ここでも、実に特徴的な現象が生じた。

  • 社会は個人的な活動を支える情報技術として電話を利用することを選び、結局、公共的な活動を支える情報技術として電話を使用することにはならなかった。

  • たとえば、紙に「5」と印刷されているとする。この紙に記された文字を物理学的に測定すれば、インクの量や面積、紙全体に占める割合を算出することはできる。しかし、私たちは「5」を見たとき、その意味を即座に理解する。それこそが情報の本質であり、情報は物理学的に測定できるものではないとシャノンは考えた。

  • やがてインターネットとなるARPAネットは、米国の大学や研究所にあるコンピュータを結び、資源を共有することを目的としていた。よく「インターネットは軍事目的で開発された」と言われるが、それとは程遠いものであった。

  • 「発明家とは他人を富ませる人である」という言葉が真実であるならば、ビッグデータの時代には、分析可能な未使用情報の意外な使い道を考え出した者が大きな成果を上げるだろう。

  • 情報技術が家族や組織、地域社会、国家、地球とのシナジーを高めるのか否かを問う態度、いわば「ハイ・シナジーの可否」を基準にして活動を取捨選択すれば、情報技術の未来はきっと明るいものになる。同様のことはテクノロジー全体、そして梅棹が問題にした文明や人類についても言える。その行く末は、極めてハイ・シナジーな地球村の誕生である。

買ってねー

おすすめ度:⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️

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