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リスト (作曲家・人と作品シリーズ)

どうしてこの本を選んだか

偉大な作曲家は多くいるが、どのような人生を歩み、どんな考えを持っていたのかを知りたくて、作曲家の伝記を読むようにしている。ショパンについては一度読んだことがあるので、彼のライバルともいえる同年代の作曲家であり、史上最も偉大なピアニストの一人であるリストについても知りたくなり購入した。

概要

作曲家としてのリスト像をフレッシュに描く

感想

リストといえば超絶技巧が先行している印象があった。ピアノ業界の中でも難曲を数多く生み出し、ピアノ曲の中でもトップクラスに難しい超絶技巧を多く含む作曲家だと思っていた。最初のイメージとしては、演奏の技巧が中心で、ショパンのような私的な楽曲や曲への哲学的な要素は少ないのではないかと考えていた。

しかし、実際にはリストは比較的早い段階から哲学や宗教に傾倒し、演奏家としてのあるべき姿に関する独自の哲学を持っていたことが分かった。ピアノの先生から「リストの後期の作品には哲学的な要素が多い」と聞いていたが、若い頃からすでに哲学的な思想を持っていたことには驚かされた。

また、世界的に注目を浴びていたリストであるものの、最終的にはひっそりと息を引き取った点が印象的だった。もちろん当時も注目されていたが、晩年はあまり活動的ではなく、どこか寂しさを感じさせる最期だった。それを知って、ショパンを読んだときと同様に、有名な作曲家や歴史的な人物であっても、生涯を閉じる際には寂しさを感じることが多いのだなと思った。

今後への活かし

リストの意外な生涯や考え方を知ることができたことで、他の偉大な作曲家や演奏家の本も読んでみたくなった。

Notes

  • 天才とは、人間の魂に神の存在を啓示する力のことである。
  • 「芸術を己の利益や不毛な名声のために使うべきではなく、人間を一つに結びつける共感の力としてみなすこと。それが芸術家に課された課題なのです。」
  • 平民の生まれであり、田舎の出身であったことはリストにとって大きなコンプレックスであったと考えられる。貴族趣味や爵位への執着は、このコンプレックスの裏返しであろう。また、彼は芸術家として自由を重んじる一方で、芸術家の社会的地位の向上を強く訴えた。
  • 「なんという人物!なんというバイオリン!なんという芸術家!神よ!この4本の弦に一体どれほどの苦悩、苦痛、耐久、苦しみが込められていることでしょうか。」
    この有名な書簡からは、リストがパガニーニの演奏を聞いて大きな衝撃を受け、偉大なる芸術家たらんと奮起した様子がうかがえる。
  • リストはピアノの技巧的完成だけを追求したのではなく、音楽だけでなく哲学、文学、宗教にも目を向けていた。
  • 「メカニカルで表層的なズタズタな演奏がまだ一般的ですが、私はそうした演奏をできる限り正したいのです。自らの精神的な解釈があってこそ、交響的作品に命が宿るのです。」
  • リストは生涯の最後の四半世紀で宗教音楽への傾倒を見せ、1870年代からは教育者としても積極的に活動した。
  • 「テクニックは機械的な演奏によってではなく、精神によって培われる。」
    リストにとって宗教音楽とは、生の苦しみからの解放や救済の役割を果たすべきものであった。つまり、彼にとって宗教音楽と無調音楽は表裏一体の関係にあった。
  • リストの死から7ヶ月余り後、1887年3月9日にカロリーヌがローマで息を引き取った。彼女がどれほど自己主張が強い人物であったにせよ、リストに対して苦言を呈し、それをリストが疎ましく思うことがあったにせよ、生前から精神的なリスト像を作り上げようとしたにせよ、彼女ほどリストを愛し、リストが充実した生涯を送り、優れた作品を残せるよう心から願った人物はいなかっただろう。

買ってねー

おすすめ度:⭐️⭐️⭐️⭐️☆

リスト (作曲家・人と作品シリーズ)